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恋愛自給自足の間

恋愛における空想の重要性について。それと趣味。

二次専には、実写AVがこう見える

 

 二次専とは、二次元のキャラクターにしか性的興奮を抱かない人のことです。三十年ほど前には「二次コン」と呼ばれていたようで、今にいたるまでネットや評論などでたまに言及されています。ですが、その生活や価値観について、当事者が発信することはあまりなく、実態が語られることもほとんどなかったと思います。

 というわけで、今回は一人の二次専として、率直な実感を書いてみようかと思います。テーマは、二次専から観た実写AV、です。(なお以下の内容はあくまで個人の感覚であり、他の二次専すべてに当てはまるとは限らないことをご了承ください)

 


 今でこそ、自分が二次専であることを違和感なく受け入れていますが、数年前には「実在する他者に欲情できないのはまずいのではなかろうか……?」という地味な葛藤がありました(そんなに強烈な葛藤ではなかったのですが)。「もしかしたら、このままではまずいのかもしれない」そんな意識から、あるとき一度だけ実写AVを視聴してみたのです。

 もちろん、いきなり本格的なAVを観ようとは思いませんでした。そもそも実在する人間に興奮する習慣なんてまったくありませんから、単にAVを観るだけではどうにもならないのは明らかです。そこで準備運動として、まずは某イラスト投稿サイトでお気に入りのエロ絵師さんの作品を鑑賞し、自らの性的興奮を高めます。そしてその後、ネットショップで公開されている、短いサンプル動画を試しに開いたのです。今では内容もうろ覚えですが、たしか和室で男女が延々といちゃいちゃしている感じの動画だったと思います。

 

 興奮しているときに実写AVを観れば、自分の中の欲情回路に実写AVを組み込めるのではないか? そんな発想のもと、自己暗示をかけるようにして実写AVを視聴したのです。

 

 では、当時の僕はAVに興奮できたのでしょうか?
 ……まぁ、大方の読者が予想するとおり、答えは「NO」です。

 

 むしろAVが始まった瞬間、すうっと性欲が引いて、胸の奥が冷めていったのです。
「……この人たちは何をやっているのだろうか」
 これが、僕の実写AVに対する率直な感想でした。

 

 たとえて言うなら、僕が実写AVに対して抱いた感覚は、「いい年した大人がポケモンごっこをやっているのを、延々と見せつけられている」ような感覚です。もちろん、ポケモンごっこの中にも、以下の動画のように(コントとして)クオリティが高い作品はあります。

 

 

 ただ、この動画はあくまでもメタ的なコントであり、かつ映像の加工等もやっているから面白いのです。もしも大人が、ネタではなく、大真面目にポケモンごっこをやっていたら、そしてそれを無加工のまま見せつけられたら、どうでしょう。馬鹿馬鹿しく思うと同時に、なんともいたたまれない気持ちになるのではないでしょうか(ちなみに、同じ理由でマンガの実写化も基本的に無理です。ただし『孤独のグルメ』だけは例外とする)

 

 僕が実写セックスを観たときに感じたのは、まさにこの気持ちです。
 つまり、性愛というものに対して現実味が感じられない、というわけです。

 

 もちろん生物学的な知識として、「人間は交尾することで子孫を残している」ということは知っています。ですが、それはあくまで知識にすぎず、僕の生活からは遠くかけ離れた別世界の話なのです。……これも例を挙げて説明した方がいいかもしれませんね。

 

 たとえば、量子力学的には「光は粒子であると同時に波である」と言われています。ですが、それを知っていたとしても、日常生活を送っているかぎりにおいては「光は粒子であると同時に波である」ということを実感できませんし、ましてやリアリティを感じることもありませんよね。

 

 僕にとってのセックスは、量子力学みたいなものです。

 

 知識としてはとても興味深いですが、まったく実感できるものではないし、実感したいと思うという発想すら出てきません(「光は粒子であると同時に波である」という情報を身体で実感したいと、心の底から渇望できますか? ごく少数の物理学者たちはできるのかもしれませんが、僕は無理です)。

 

 このように書くとよく誤解されるので言っておきますが、「モテないから二次元に逃避した」というわけではありません。むしろモテるモテないを気にする年頃になる前から、すでに「性愛は二次元の概念」という感覚だったのです。僕を含めて最近のオタクは、本田透の『電波男』のようなオタク観とはかなりズレがあると思いますので、その点にはご注意ください(僕自身、本田透とは二回り以上歳が離れていますし)

 


 気の向くままに書き連ねてみましたが、二次専から観た実写AVというのは、「いい歳した大人が大真面目にマンガの真似事をしているのを延々と見せつけられる」という、もはやちょっとした罰ゲームだということがお分かりいただけたかと思います。

 

「人間はある程度成熟したら、みんなセックスしたがるんだ」という思い込みを持っている方がしばしば散見されますが、他人とセックスするという営みは決して普遍的なものではありません。そのことを指摘して、今回は筆を置かせていただきます。

 

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